とあるところから陰陽師かそれに類する職業に付く場合はどうすればいいのか? というような質問をいただきましたので、分かる範囲でお答えします。
実際に接触した2人の陰陽師の先生の話
一人目は、お祖母様が陰陽師と神職をやられていた経験があり、それを引き継ぐ形でやってらっしゃいました。しばらくはとある地方の神社の管理をお手伝いしつつ、地鎮祭などのご祈祷を行って、神職としての仕事を学び、その後に、お祖母様の手ほどきで陰陽道の技法をミックスした、いくつかの独自の作法を引き継ぎ、それらをつかって、方位や吉凶を占い、人の相談にのる、というようなことをしていました。
神職がベースでご祈祷や地鎮祭と方位の占いが中心ですが、時折踏み込んだ人生相談をした上でお祓い等を行っていました。
もう一人は、独学の先生です。その方は神道系の大学を卒業した後で、神職のアルバイトを経て、道教系の風水の先生のアシスタントを経て、ある時点で独立して陰陽師として同じように方位や占いを使って人々をサポートする仕事をされていました。この先生は、生活全般をアドバイスする風水系の占い師として活動をしていました。
お二人の経歴から思うのは、なかなか通常の職業と違って、これというルートが無いのが難しいですね。
陰陽師になるのは難しい?
ただ、どちらも共通しているのは、やはり前提として神道系か道教系の知識を持つ必要があると思います。
前者については、日本の大学で神道についての知識を教えています。後者については、台湾に道教協会があり、そこを経由して知識を身につける必要があります。ちなみに道教については、日本にも道教協会があったり、先生がいらっしゃるのですが、ちょっとルートは探しづらいかもしれませんね。学びの場を用意しているかどうかでもわかりません。個人的には道教の先生は存じ上げていますが。
そしてそれ以外の知識もいくつか学ぶ必要があります。
とくに護符等を書く際に必要な書の知識と技術、そして陰陽五行や風水の知識は必要です。書の知識は書道の先生に師事することで、陰陽五行や風水の知識は、占い系の学校等に通うことで身につけることができるでしょう。
ハードルが高いのは護符等の儀式に必要な書の記述や、陰陽師的な儀式自体の手順ですね。
例えば護符には、よくある記述のスタイルがあるのですが、あれは背後にある思想を理解しないといけません。
しかし、その思想を体系化して記した書籍というのはなかなか希少でして、身につけるのが難しいのです。
先にあげた2名の先生は、それぞれお祖母様と、道教風水師の先生から学び書の知識をみにつけていました。
ですから、理想は何がしかの師を探す必要があるのですが、そうでない場合は、古文書をあさって、自身で護符のプログラムを読み解いていく必要があります。護符の考え方は象形文字と同じです。神道についてはわりと体系化されており大学にそういった知識があるかもしれません。
また儀式については、神道の延長で応用ができると思います。
こう描いてしまうと、ツギハギによるスキルアップを提案しているように見えるかも知れませんが──陰陽師自体は「存在」ですので、ツギハギでもスキルがあって物事が実施できれば問題ないのです。
この考え方は、占い師さん等の生業とおなじものです。
陰陽師とは技術を身に着けた上で、自ら名乗れば陰陽師です
陰陽師というのは、実は自分がそうである、と言った上で仕事をしているのであれば、スタイルは様々で良いのです。
もちろん、確かな先生に師事することができれば申し分ないですが、目的は、人々の生活の相談にのりサポートをすることです。それができれば、あとは普通の仕事とかわりありません。根底にあるのは以下のスキルです。
- 神道または道教の知識
- 風水や陰陽五行、六十四卦等を使った占術の知識
- 書のスキル(達筆なほど良い
- 護符(神道)や霊符(道教)の知識
- 陰陽師に通ずる、各種儀式の手順等の知識(神道系、道教系どちらでも可)
これらは今の情報化社会では、なんとか手に入る情報であると思います。これらを身に着けて、良く実践することができるのであれば、あとは陰陽師を名乗れば、十分にわたしはその人が陰陽師だと思います。
取っ掛かりは?
とはいえ、さすがに何ら取っ掛かりがないのもやり辛い話かとおもいますので、以下にいくつか入り口になりそうな書籍を紹介いたします。
まず「陰陽師の解剖図鑑」こちらは、陰陽師という生業についての基本的な情報が書いてあります。こういうものは導入としていいですね。しかし、実際の施術となると話は別ではあります。これは現代にそのまま応用できるものではなく、儀式等は施術者自身が現代の風習に基づいてアレンジする必要があります。
次に必要な知識として例えば「よくわかる祝詞読本」のような知識も必要です。日本における陰陽道は神道の亜流ですから、一般的な祝詞を理解しておく必要があります。
それから歴史的背景を理解する上では「秘説 陰陽道」のような本も有用です。これらは、彼らがどういう存在であったのかを知るための緒を提供してくれます。
さらに周辺アイテム等への知識も必要です。儀式は施術は、モノとあわせて扱うことで、より一層伝統的な意義を持ちます。ですからこういったものの知識も大切です。「[図説]呪具・法具・祭具ガイド」
さらに、背景の理解も必要です。例えば「古代天皇と神祇の祭祀体系」のようなものを読むことで、陰陽師としての儀式の背景にはどのようなものが存在しているのかを理解する必要があります。
こちらで紹介した書籍はほんの一部です。実際には、コレ以外にも様々な知識が必要です。
そして、知識があれば施術や活動に意味が宿るのです。儀式や呪法というのは「それをやる意味」の積み重ねですから、陰陽師としての役割を担いたいのであれば、バックボーンの知識を得ることが不可欠なのです。
それらを理解することで、現実に活動されている先生方のように、現代の陰陽師としてのアレンジを行った上での活動ができるようになります。