最近陰陽師というのは、フィクションで多くとりあげられることもあって、しばしばコンテンツ上にみかけることがあるようになりましたね。
陰陽師といえば有名なのは安倍晴明ですが、それに対してもうひとり名前が思い浮かぶ人もいるかと思います。
そうです、安倍晴明のライバル役、芦屋道満です。
芦屋道満とは?
芦屋道満とは、陰陽師にまつわる文献に、安倍晴明とあわせてしばしば登場する、宮仕えではない陰陽師です。
似たように名前で道摩法師という名称もありますが、同一人物かどうかはよく分かっていないようです。
芦屋道満は、江戸時代までのほとんどの文献において、安倍晴明のライバルとして登場し、また安倍晴明とおなじくらい、各地に伝説が残っている存在でもあります。
芦屋道満は実際にはどういった存在であったのか?
陰陽師というのは、実は宮仕えの官人陰陽師と呼ばれる存在と、民間で広く活躍した法師陰陽師という存在がいました。
官人陰陽師は安倍晴明のような存在で、法師陰陽師が芦屋道満のような、宮仕えではない陰陽師ですね。
そして、官人陰陽師と法師陰陽師は、それぞれは史実でも利害関係の違いから、しばしば衝突することがあったようです。
その利害というのは、当時の陰陽師は、宮仕え/民間にかかわらず祭事を担っていたのですが、その仕事を奪い合う事があったようです。
祭事というと神道の神主さんもいたでしょうが、それとは別に法師陰陽師という野で活動する陰陽師もいました。
彼らの中には胡散臭い人もいたでしょう。しかし人数だけは多かったようです。なぜならば、人の営みに冠婚葬祭はついてまわりますからね。そして法師陰陽師は、当時の神社仏閣の人員や宮仕えの陰陽師らに変わって、それらの仕事を担ったといいます。
彼らは、宮仕えの仕事を脅かしていたのですね。
芦屋道満の活躍
さて、この蘆屋道満という人物は、物語のなかではしばしば悪役として描かれますが、それはなぜか?
最も有名な話としては──
芦屋道満は、安倍晴明と呪術勝負をして負け、それによって一時的に弟子入りするのですが、安倍晴明が不在のすきに、安倍晴明の奥さんをたぶらかして、二度目の呪術勝負で安倍晴明に命をかけさせた上で、打ち負かしてしまうのです。
それによって、安倍晴明は一度死ぬことになりますが、後に蘇生され事件の真実(妻の不義)を突き詰めたあとで、芦屋道満を斬首にしています。
なんともあぶなっかしい宮中ですね。
芦屋道満と現在の陰陽師
この芦屋道満というのは、民間の陰陽師ですが、現在も陰陽師を名乗る人たちをよく見かけますね。
彼らも要するに、現代における法師陰陽師の系譜であるといえます。
安倍晴明直径の陰陽師というのは土御門家という家につらなっています。そして、土御門家は明治より後の、国内の宗教関連の改革によって、陰陽道を禁止されたことにより、公には陰陽師という仕事を廃業しております。
ですから、安倍晴明直径の陰陽師やその生業というのは、ほぼ断絶している状態にあります(京都にのこる藤田家には土御門家由来の暦制作などを担う宗教法人があるが、これも後継者に悩んでいる)。
一方で、陰陽師という肩書や呪法は今に残っており、それらを身に着けた民間の陰陽師が現在では、タレント業や占い業、いくつかの祭事等を行っているような状況があります。
つまり、現在にのこっている陰陽師はほぼ法師陰陽師であり、芦屋道満のような野良の陰陽師の色が強い人々である、という訳です(一時期、とある著名な陰陽師が土御門家の名を受け継げないかと交渉したことはあるようです)。
だからといって現在の陰陽師が能力がないかと言えばそんなことはありません。
芦屋道満が民間の法師陰陽師であっても、安倍晴明に相対することができたように、正しい呪法や儀式を知った陰陽師は、効果的な仕事ができます。